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木版画を始める人へ To those who begin

はじめに

IMG_5232.JPG版画ブ一ムと言われています。コレクターヘ版画・を作る人達は以前に比べ急激に増えています。
しかし、木版画を志す人は、他の版種、銅版画、石版画、シルクスクリーンなどに比べまことに少数と言わなければなりません。
 「水性絵具で摺る正統的木版画を作る若い人は激減し、前途は悲観的状態である」と我々木版画家は話し合っています。
 これについて、いくつかの原因が考えられますが、そのひとつの要因に木版画の技術の習得には、永い年月と職人的な熟練が必一要と、いささか伝説めいた流言のために敬遠されているのではないかと思います。
IMG_5215.JPG日本画、洋画でも、他の版種でも、基本的な技法は学ばなければなりません。木版画だけがこのような難解な技術の習得が必要だと言われておりますが、この誤解はどこから来ているのかと考えてみますと、日本の現代版画は、浮世絵版画の伝統を引きつぎ、技術を継承していると考えているようです。
 現代の日本の木版画は、用具、技法上多少の影響を受けましたが、浮世絵版画とは異質のものです。すなわち明治末期から大正の初めにかけて起こった、創作版画運動の延長線上にあるものなのです。
 すでに他界された、日本木版画の先達の方々、恩地孝四郎、前川千帆、川上澄生、棟方志功の作品は、大変に素朴な技法であり、いずれも精妙な浮世絵版画の技術に比べたら、大変に下手と言う表現を差しあげたいと思うのですが、詩心あふれた人間味を感じさせる創造的作品と言えます。
 つまり、他の版種と同様に、基本的技法を身につければ木版画は出来ます。それすら不必要と考える木版画家すらおります。
 近年、日本は経済成長と共にすべての面で価値基準の変動が行われ、錯誤もありました。
 そして昨今は、経済状態も変わり、見捨てたものをもう一度。見直すのだそうです。
 湿潤な日本の風土の中で生まれた、和紙と水性絵具で表現する、独自の木版画を志す人達が、ひとりでも多くなる事を望むものです。


LinkIcon実際の作り方LinkIcon作品にするために(PDF)

1977年11月 アトリエ NO.609からの引用です。

1977年11月 熊谷吾良